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スープの中にスプーンを潜らせ、ベーコンを掬い取る。
口に運ぶ。
うん、まあまあ。
ノルが、刃物のような目で私を見つめている。
そんな目をされたら、食べにくいじゃないか。
「貴様は……強いのか弱いのかわからんな」
「いきなりどうしたの?」
「不安では無いのか?
イスマズルカという国そのものから命を狙われておるのだぞ」
「だからこれから余所の国に逃げるんじゃない。
あなたが安全だって言った国でしょう?」
「…………信用してもらえるのは有難いが、貴様はもう少し我輩を疑うべきであろう。
ここ最近我輩にべったりではないか」
「あら、そちらこそ。
あなたは強いんだから、一人でどこにでも逃げたらいいのに」
「だが……一人では」
「寂しい?」
「ああ」
私はスプーンを置いてため息をついた。
「どうしてこうなっちゃったんだろう」
「我々は互いに依存している」
「うん。
そりゃそうよね。
毎日ずっと一緒にいるんだから」
「……なあ、貴様はどうなりたい?」
「取り敢えず、そのお隣さんに逃げ込んで、それから、そうね、その国のお姫様にでもなって、優雅に暮らそうかしら」
そういう事を聞いているのではないとわかってはいるけれど、なんだか恥ずかしくて、私はわざとズレを起こした。
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