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「ふん、そうして暫くしたら、また仕事が嫌になって、今度は城ごと空を飛ぶのだろう?」
「そうね」
「とんでもない女だ」
「ねえ」
「なんだ?」
「そうやって、逃げ続けたら、最後はどこに辿り着くんだろう?」
「それは、し…………いや、わからん」
どうして不安にならないのかというと、それはきっとノルがいるからだと思う。
けれど、ノルがいなくなったら、私はどうするんだろう。
いや、きっと私が先にいなくなる。
そしたらノルはどうするんだろう。
「そんな顔をするでない。
ずっとずっと先の事を考えるのは、我輩のような老人の役目だ」
「ふっ、老人って」
「やりたいこと、それだけを考えるのが、諸君ら子供の仕事である。
一国の姫では不満なのだろう?
貴様は何をしたい?」
少しだけ目をつむって考える。
安寧?
復讐?
それとも本当に魔女になってやる?
そうして出てきた結論は、とても馬鹿らしくて、なんだか私はようやく子供になれたような気がした。
「世界征服。
世界中の誰もが怖がる魔女になって、世界を私の都合の良いように作り変えてやる。
そしたら、なんでも出来るよ」
「そうか」
ノルが口の端を曲げて、ニヤリと笑った。
鋭い牙が剥き出しになって、この人は人間ではなくて吸血鬼なんだということがはっきりとわかる。
不思議と恐ろしくはなかった。
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