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クーデリカの『空がまずいなら、家に車輪を付けて動かそう』という、ひきこもりの鑑のような発案を却下し、我々は少なくない荷物を背負い森を歩いていた。
やはり、キトパ族と出会った森とは違い、空気に潤いがあり色彩も鮮やかである。
竹によく似た円筒状の植物の深い緑。
白に近いクリーム色をした樹木。
藤、紅、更には黄と桃色の混ざったような色合いの花が、もうもうと生い茂る雑草の中から時折顔を覗かせている。
道も平坦で歩きやすく、クーデリカ一人を除いて問題なく進行することが出来ている。
「ちょ……ちょっと、休憩」
「またか」
「しょうがないよノルさん。
この人ビックリするくらい運動しないんだから」
岩に腰かけたクーデリカが、俺の背負っている食糧袋を指さす。
「なんで、そんな、荷物で、あなた、は、平気なのよ」
家から出る時に、残存する食糧を全て持っていこうとしたら、流石にクーデリカに止められた。
注目を浴びるのを極端に嫌っているようだ。
しかしこの大荷物は、そこにこそ狙いがある。
俺にしか出来ない芸当を目の当たりにすれば、二十年前からライマに居を構えていた者達は、直ぐにこの俺の輝かしき軌跡と、目の前に現れた美丈夫を結びつけるだろう。
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