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石畳みの道を左に。
少し進むと、すぐに景色が変わる。
みんなどこか濁った目で、下を向いて歩いている。
彼らとは反対に、私は空を見上げてみる。
地面と同じような色合いの曇り空だ。
私も、彼らのうちの一人に過ぎない?
……早く終わらせてしまおう。
布が被せられた、ガタガタ揺れる車輪付きの檻。
真ん中で折れた、街灯だった物。
水の出ない噴水。
確かこの先だ。
「おや、魔女さんのご来店だ。
いらっしゃい、毎度どうも」
「今日は新しいのいる?」
「若いのが入ってるよ。
にしても毎度毎度そんなに取っ替え引っ替えして、一体何に使ってるんだ」
「なんでもいいでしょ。
そこは詮索しないって約束じゃない」
「これでも俺はあんたのファンなんだよ。
ちょっと、嫌な予感がしてさ……」
2150キール。
少し高めだが、他の店で買った時のリスクを考えると、なんてことない。
鷲鼻の店主は溜息をついて、私の手から金を受け取った。
「奴隷の顔を見すらしないんだから、全く不思議な客だよ」
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