空飛ぶ魔女の家

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私は魔女……ということになっているらしい。 薄暗く不気味な館に住み着き、いつか世界を混沌に陥れる為に、日夜人体実験に明け暮れる魔女。 うん、間違ってはいない。 通称、魔女の家。 つまり私の家の庭に、新しい被検体が置かれる。 「ご苦労様。 いつもありがとう」 私の手から銀貨が一つ減る。 マシュー奴隷商店専属配達員のベスは、何も言わずにすっと踵を返してしまった。 ガタガタと荷台の揺れる音。 家の中の解剖室まで運んでもらってもいいのかもしれないが、何となくあの配達員は得体が知れない。 ふとした隙に何か大切なものを盗まれそうな、そんな気がする。 それに、このくらいの距離なら、木偶達でも何とかなる。 地中に埋まった木偶の内臓回路に向けて、魔力を流し込む。 1番から6番、aのインプットに少量の魔力を入力。 腕部左右に仕込まれた反復回路の中を魔力が跳ね返り、自動的に木偶が土を抉る。 よし、地表に出てきた。 調整は完璧だ。 手動モードで木偶を被検体の周囲に配置。 「よろしく」 後はbとcに魔力を入力するだけで、自動的に解剖室へと搬送される。 多分、ここまで魔法の自動化を進めているのは、このイスマズルカ周辺で私くらいなものだろう。 可愛い私の木偶達が、せっせと働く。     
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