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エルォドゥージンみたいに、エルォドゥージンみたいに!」
暫く部屋を離れて、コーヒーでも飲んでいよう。
私は今、かつてない程焦りを感じている。
ゆっくり二杯飲み干してから実験室に入り直したら、ノル・ニール・シュテフタッドが解剖台の上で仁王立ちしていたのだ。
どうして死んでない?
どうやってベルトを破った?
「我輩はノル・ニール・シュテフタッド!
さあ、貴様の番だ。
名乗りたまえ」
「……ク、クーデリカ・アガサ」
「ふむ、ククーデリカか。
変わった名前をしておる」
頷きと共に銀髪が揺れる。
頬はげっそりと痩けているが、薬剤の影響が出ているようには全く見えない。
本当ならばとっくのとうに、心不全を起こし呼吸が停止しているはず。
刺す物を間違えた?
いや、そんなはずはない。
だってあの筒には、毒薬を入れた注射器以外の物は入っていないし、今日の朝にはちゃんと薬剤を補充しておいた。
「ありえない……」
声が漏れ出てしまう。
そう、ありえない。
「ふむ。
ところでククーデリカよ。
我輩は少々貴様に物申したい事がある。
我輩だったから良かったものの、いきなり初対面の者に劇物を盛るとはどういった了見だ?
死んでしまうかもしれないではないか」
しれないではない。
確実に死ぬ……はずなのだ。
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