空飛ぶ魔女の家

99/103
前へ
/108ページ
次へ
「我輩が合図をするまで、進路を右にずらせ」 ノルが窓を覗き込むような格好のまま、片手を挙げる。 何かが見つかったのだろうか。 他にあてがあるわけではないので、ノルの指示に従い機体を旋回させる。 最前と最後尾の火力口の角度を変える。 それぞれ左、右にしてやると、ゆっくりと高度を下げながら、進行方向が変わった。 ノルが手を降ろしたので、少しだけ火力を逆の方向に吹かし、機体の回転を止める。 上手くいった。 「よし。 暫く真っ直ぐだ」 「どこに向かうの?」 「イスマズルカ以外を知らん貴様に伝えても仕方が無かろう。 安心しろ。 我輩が昔滞在していた国で、まず間違いなく安全な国だ。 コークリアとも離れておるので、子供らにも危険は及ばん」 ノルが窓の中心辺りを指差す。 その先には、平坦な木々の間から突き出た、奇妙な三角屋根の塔があった。 木に触れないギリギリのところまで高度を落とす。 目をつむり、動きだけを捉え、羽が落ちるように静かに。 「それ以上はヤバそう!」 窓から身を乗り出すヤンの声を合図に、出力を微かに上げる。 ベランダから飛び降りて、木を伝って地面に降りたノルが、一本の木を揺らす。 その近くなら安全に下せるという合図だ。     
/108ページ

最初のコメントを投稿しよう!

9人が本棚に入れています
本棚に追加