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「我輩が合図をするまで、進路を右にずらせ」
ノルが窓を覗き込むような格好のまま、片手を挙げる。
何かが見つかったのだろうか。
他にあてがあるわけではないので、ノルの指示に従い機体を旋回させる。
最前と最後尾の火力口の角度を変える。
それぞれ左、右にしてやると、ゆっくりと高度を下げながら、進行方向が変わった。
ノルが手を降ろしたので、少しだけ火力を逆の方向に吹かし、機体の回転を止める。
上手くいった。
「よし。
暫く真っ直ぐだ」
「どこに向かうの?」
「イスマズルカ以外を知らん貴様に伝えても仕方が無かろう。
安心しろ。
我輩が昔滞在していた国で、まず間違いなく安全な国だ。
コークリアとも離れておるので、子供らにも危険は及ばん」
ノルが窓の中心辺りを指差す。
その先には、平坦な木々の間から突き出た、奇妙な三角屋根の塔があった。
木に触れないギリギリのところまで高度を落とす。
目をつむり、動きだけを捉え、羽が落ちるように静かに。
「それ以上はヤバそう!」
窓から身を乗り出すヤンの声を合図に、出力を微かに上げる。
ベランダから飛び降りて、木を伝って地面に降りたノルが、一本の木を揺らす。
その近くなら安全に下せるという合図だ。
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