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なにも、夜空に願うのは人間だけでは無い。
野菜もまた願いを請う。
「この頃、ポテトチップスがスーパーから無くなっている、そうですよ」
僕はいつ何時も空を見上げている、太陽が燦々と輝いている時、月が淡い光を発生させる時、だが僕、ハーブの位置では日光に当たる時間が極端に少ない。
僕の横に栽培されているジャガイモが言う。
「なんだ? いきなり」
最近、強風などの自然災害のせいで今年のじゃがいもの値段が急上昇しているそうだ。
「ジャガイモさんもそろそろ収穫されるのかなって」
「もう、そんな時期か。やっと空というものを拝めるんだな」
僕はジャガイモさんが育つまで、空の話をよくした。
ジャガイモが思い浮かべる空というのは、どのようなものかはハーブの僕には心境を察する事は叶わない。
「ハーブが話してくれた、夜空というのは土みたいに暗いのだろう」
「いえ、土の中よりは明るいですよ」
「明かりという表現がよく分からないな」
じゃがいもは何を思って、育ったのだろう。
どうやって、食べてもらいたいのだろう。
そんなことを思っていると、夜にも関わらず足音がする。
人間だ。
「別れの時が来たな、じゃあな。ハーブ」
人間に茎の部分を掴まれているジャガイモさんに最後の質問をする。
「ジャガイモさん、あなたはどうやって食べられたいですか」
「そうだな、美味しく残さず食べてもらえるなら何でも良いかな」
その言葉には嘘偽りは無い、だがどこか物言いたげの雰囲気を感じる。
人間の力によって、茎を引っ張られジャガイモが空に浮かぶ。
「ジャガイモさん、流れ星に願い事をすると叶うそうですよ!」
そう言い切ると、ジャガイモさんは空を見上げて言う。
「夜空は綺麗だな、ポテトチップスハーブ味になりたい」
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