27話「呪詛談義」

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「そうです。ただ、証拠がこれだけ見つかっていないということは、そこから手掛かりを見つけることは難しそうですね。何かに傷をつけて刻印を刻むタイプの場合、傷が証拠として残ってしまうわけで、さすがにこれまでに発見されないのは不自然です。なので、恐らく違うタイプ。何かに傷を付けずに刻印を書くタイプの線が濃厚ですね。直接書くにしろ、紙に書いて貼り付けるにしろ、燃えカスなどの痕跡が僅かに残ったりするですが……燃え方も呪いによって千差万別ですからね。大きな炎だったら燃えた形跡も残るかもしれないですけど、小さな炎だったら、それも無いです。その燃えカスも風で飛ばされたりしたら分からなくなるので、刻印による呪いなら、書くタイプの可能性が一番高いと思うです」 「となると、証拠は風で飛ばされた燃えカス……死亡推定時刻のちょい前から発見までの時間に風が吹いてるかどうかってところね。そこらへんからも何かが分かりそうだけど……呪詞はどうなの?」 「呪詞は考えにくいですね。本人に直接聞かせるとなると、殺人が起きた時刻にターゲットの近くに居ないといけない。普通の犯罪と同じくらいアリバイが証明されやすいです」 「つまり、警察が何の証拠も掴めないでいる今の状況だと、可能性は低いと」 「そういうことです。ただ……他の手段も含めて遠隔でやったとすると……」 「犯人に近寄るリスクは無くせるわね」 「はい。でも、やっぱりある程度犯人の近くに近づかないといけなかったり、犯人に何かしらの物……つまり、ターゲットだと分かるシンボルを持たせたりしないといけなかったりします」 「バレるリスクは意外と大きいわけね。ターゲットの持ち物は……調べなくてもいいか」 「ですね、不特定多数をターゲットにしている以上、その方法を使う意味は無いですし」 「そうね。辻褄の合わない持ち物を調べるのは、警察だってやってるだろうし」     
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