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「無論だ。頭は固うて憎らしき輩であったが、それだけに志は立派であった。この男の無念、晴らせてくれようぞ!」
「いいですね、丿卜さんは。メンタル強くて……」
それは梓にとっての励みにもなったが、同時に強い重圧になっていた。それは殺人現場の強烈な光景と相まって梓の精神を蝕んでいる。そのせいで、梓は最近、よく眠れていない。
「私なんて……はぁ……なんかもう、耐えられないです……」
梓はその精神の病みの原因を自覚している。が、自覚しているからといって気が休まるものでもない。むしろ、あの殺人現場が頻繁にフラッシュバックしてきて気が狂いそうだ。
梓はまたコタツに頭を突っ伏そうと思ったが、鳴り響くチャイムがそれを止めた。
「あら……お客さんでしょうか。あまり重い依頼じゃないといいんですけど……」
梓は、場合によっては依頼を断ろうとも思いつつ、玄関へと歩いていった。
「あ、梓ー!」
「ああ、杏香さんでしたか」
「よっ! ……どしたの? なんかやつれてない? 目も赤いし……」
「ええ……ちょっと気分が滅入ってて……」
「そっか……まあ……気持ちは分かるわ。杉村のことは残念だったし……お友達も巻き込まれたんだって?」
「そうなんです。不幸って重なるものですね」
「気の毒に……じゃ、出直そっかな、梓の気分が落ち着いたら電話してよ」
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