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「なるほどねぇ……妖怪は妖怪で、色々と事情があるわけね……会社も仕事も無いってわけでもないか……で、そのクレハってのは信用できるの? 妖狐なんでしょ?」
「ええ……クレハさんの性格から、私たちを惑わす映像を見せているのかとも思ったんですけど……長としての振る舞いから考えると、里の信頼をわざわざ貶めるようなことをするとは考えにくいです。少なくとも、長としてはちゃんと職務を全うしてるようだったです」
「梓の見た映像の信頼性は高い……か……」
「はい。そして、妖怪の仕業ではないとしたら、誰の仕業か」
「碌でもない結論に至りそうね。事件の起きた黄昏時……つまり夕方以降に、妖怪以外で活動が活発になる生き物……」
杏香が深刻な顔をしながら、お茶を一口すすった。梓はそんな杏香の様子を見ながらこくりと頷き、話をつづけた。
「学校や仕事が終わった時間の人間……それが一番当てはまっている生き物です」
「なるほどね。学校や仕事から解放されて、自由になった人の活動時間……か……言われてみると、一番合致するじゃないの」
「ですよね……」
梓の脳裏に瑞輝やティムの事が浮かぶ。あの二人も放課後、映画を見た後に襲われた。他の事件と同じく、夕方から夜にかけてだ。
同じ人間がやったこと。そう思うと梓はため息をつかずにはいられなかった。
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