夜空を仰ぐ

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 ちっとも悪いと思っていないクセに土下座をすれば何とかなると思っている者。  開き直って、自分の子供や女を差し出す者。  逆ギレして、「アンタらみたいな高利貸しは違法やっ! 訴えたる!」と叫ぶ者。  借りたもんは、きちんと返す。  そんな当たり前のことが出来ない奴らを毎日相手にする身にもなってくれ。  今日の相手は、五十過ぎのオッサン。  薄汚れたシャツを着て、床に額を押し付けて、ただひたすらに返済日の延期を懇願している。  仕事もせずに、酒とギャンブルにのめり込むこんなヤツに金を貸す方も貸す方だと、自分が勤める会社に対し、内心、大きな舌打ちをしながらも、自分の仕事を淡々とこなす。 「いい加減にしろ。約束は守る。借りたもんは返す。そう親から教わっただろ?」 「ですから……後一ヶ月。い、いや! 一週間! 必ずお金を用意しますんで……」  台本でもあるのか、毎度おなじみの陳腐な台詞に不快感が込み上げる。  先週も、「絶対に一週間後には耳を揃えてお返しします」と泣いて縋ったコイツには、次はないと言った筈だ。  朝っぱらから、こんなゴミ溜めのような部屋まで来てやったというのに、ここに居るのはゴミ以下の腐った野郎、ただ一人。  こんな澱んだ空気。  吸えたもんじゃない。  小さく息を吐き、男の後頭部をジッと見つめた。
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