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「……んっ、ふ……ぁ、冬星、さ……」 「ん? なんだ?」 「もう、時間が」 「わかっている。だが、もう少し」 「……っ、ぁ」  静謐な朝の空気にそぐわない、淫靡さを纏った息遣い。重なる唇から漏れ出る甘やかな呼気が、室内に響いていく。  十月の第一日曜日、日枝神社にて行われる奉納演武会の朝。身支度を終えた恋人を見送ろうと立ち上がった身体が不意に抱き込まれ、唇を覆ってきた熱を受け入れ始めてから結構な時間が経っている。  奉納演武は神事であるのだからと、昨夜は身体を繋ぐことはせずに寄り添って眠るだけにとどめた冬星なのに。狂おしげに僕の身に手を這わせ、舌を絡めて淫蕩な水音を立てたりしていては、神事に向かう者としての潔斎の意味がないんじゃないのかな。 「冬星さん?」 「ん、わかっている。あと少しだけだ。それはわかってるから、今は可愛い声だけを聞かせてくれ」  僕を抱きしめる人の腕の力が強まった。時間を気にして嫌がってると思われたかな。冬星がくれる甘い情熱に溺れて名前を呼んだだけなのに。  だから、違うよ、と伝えるために、きつくしがみついた。同じ気持ちだと伝えたくて、僕を蕩けさせる熱い舌に必死で応え、口づけがもたらす快感を全身で堪能する。ただただ淫らで、とろりと密やかな二人の時間を。
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