自覚

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一人だけ、小さくて黒い金魚は、なるべく目立たぬよう、みんなと合わせるよう行動した。 「いいんじゃない?その意見に賛成」人の意見に合わせてばっかで自分の感情を隠した。 そうしたらいつしか、自分の中で自分がいなくなった。自分が見えなくなってしまった一匹の黒い金魚は、闇の底へと泡になって消えてしまいました。 「泡になった金魚」 昔母が読んでくれた。 父は毎日仕事で忙しく家にいなかった。母も同じで、読んでくれた本は、僕の記憶の中でこの本だけだ。 「自分は自分、ひとはひと」これが母の口癖だった。自分と他人は違うのだから友達に何言われても気にしてはいけない。そんな意味だ。 母の言葉はすべて正しいと思っていた幼き僕は、その言葉道理、自分と他人は違うのだ。合わせる必要はない、自分がやりたいようにすればいい。 そんなふうに思ってた。 「夢叶くんはなんでそんなに自分勝手なの?」 言われたときビックリした。皆やりたいようにやる。やりたいものが一緒だったら集まる。 そんなもんだと思っていた幼き僕は、人に合わせるというものが分からなかったんだ。 自分のやりたいものに、友達もやりたかったら一緒にやればいい。やりたくないなら僕一人でいい。その考えがなぜいけないのか分からなかったんだ。 一人の女の子が言った。「自分勝手」という言葉は、水槽に落ちた一滴のように次々と伝わっていった。
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