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奪い去るようにして店を飛び出る。すると、歩行者たちの視線が一斉にこちらへ集中した。その視線はぼくの顔からだんだん下がっていき、胸に抱えられたピザポテトへと向かっていくのであった。マズい! と思ったぼくは、とっさに服の下にピザポテトを隠し、「いやぁ、やっぱりポテトピザは最高だよなぁ」と誤魔かすようにひとり言を呟きながらさっと路地に入り、そのまま人目を避けながら帰宅した。
家に着きさっそくピザポテトを食べようと思ったが、店員が口にした最後の一袋ですよという言葉が脳裏をよぎった。これを食べてしまえば、ぼくはもう一生ピザポテトを食べられないかもしれないのだ。そう思うとどうしても手を付けられず、テーブルに置いたピザポテトを前に、どうしたものかと悶々、煩悶、苦悩、懊悩、過ぎ経つ時間のなかで、唐突にぼくは閃きを得る。
それは、このピザポテトを栽培して増やせば、なくなる心配など一切せずにすみ、さらに自給自足で暮らしていけるのでは、という気の狂った思い付きだった。
狂い立ったが吉日と、ぼくは急いでベランダに向かい、隅に放置されていた植木鉢を手に取り、そしてピザポテトの包装をやぶり、鉢のなかにぶちまける。その上にたくさん土をかけ、たくさんたくさん実れと願をかけた。
いや、マジで、頼むから実ってくれ。
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