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世界からピザポテトが消えてから一週間あまりが経ち、ピザポテトを主食としているぼくは飢え苦しんでいた。口を開けばピザポテトのうわ言、風に舞うゴミ袋をことごとくピザポテトの包装に幻視する。どこそこのコンビニにまだ売れ残っているという出自不明の噂を聞いては現場に駈けつけ、空棚を前にくずおれてむせび泣く。噛み締めたくちびるからにじむ血を、残存するピザポテトの記憶に変換し、せめてもと空腹を満たす日々を過ごす。
ある日、朦朧とした意識で繁華街を歩いていると、視界の隅に「ピザ」の文字が不意に入り、はっとして目を向けた。
そこは全国チェーンのピザ屋だった。ピザ違いだと落ち込みはしたが、しかし待てよと鈍い頭をめぐらせ、ピザにポテトを組み合わせればピザポテトではないか! と世紀の大発明のごとき発想で足を向けた。
自動ドアが開ききる前に身体をねじ込むようにして入店、開口一番にピザポテトを出せとそばにいた店員を恫喝、ポテトピザならありますという返答に、違うピザポテトだと怒鳴り返す。
店員は「少々お待ちください」と店の奥からピザポテトを取り出して、「最後の一袋ですよ」と軽くウインクしてぼくにくれた。
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