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6月のブルームーン
「ブルームーン?」
聞き慣れた声につられて振り返ると、思わずじょうろを持つ手が凍りついた。
「なに……」
何か用なの、吉良くん。と言いたいのに言葉が出てこないのは、尋常でない黒目の小ささが、いつもの彼とは違う何かを伝えるから。
「柊が生徒会長の権限を振りかざして、温室を私物化しているとは聞いてたけど。こんなに薔薇ばかり育てて、しかもブルームーンかよ」
品種名のわりには青くないんだな。なんて薄紫の花弁をつまみながら、いつまでもごちゃごちゃと口の中で言い続ける吉良。
何なの本当に。
今は僕ひとりでいたいのだけれど。
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