6月のブルームーン

1/14
14人が本棚に入れています
本棚に追加
/14ページ

6月のブルームーン

「ブルームーン?」 聞き慣れた声につられて振り返ると、思わずじょうろを持つ手が凍りついた。 「なに……」 何か用なの、吉良くん。と言いたいのに言葉が出てこないのは、尋常でない黒目の小ささが、いつもの彼とは違う何かを伝えるから。 「柊が生徒会長の権限を振りかざして、温室を私物化しているとは聞いてたけど。こんなに薔薇ばかり育てて、しかもブルームーンかよ」 品種名のわりには青くないんだな。なんて薄紫の花弁をつまみながら、いつまでもごちゃごちゃと口の中で言い続ける吉良。 何なの本当に。 今は僕ひとりでいたいのだけれど。
/14ページ

最初のコメントを投稿しよう!