第四話 そうだ!お香とやらを買ってみよう!

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「あん?朧月夜って、 つまり兄ちゃんのものになる為処女のまま入内するんだろう? それ食っちまうとは光源氏、お前は鬼畜だろう!」 理乃はまたもや憤慨していた。 「つうか、狙ってないか? 『私は何をしても許される立場にあるんですよ』 とか調子こき過ぎだろう!今なら間違いなく捕まるな。 しかも幼女をさらって自分好みに育てるとか、ロリコンかよ! かつ、マザコン…変態やん。お兄さん、可哀想…」 何やら怒ったり悲しんだりと忙しい。 あれから本はすぐに届き、早速夜寝る前に読み始めている。 元々文学が好きだったので、訳し本はすんなりと読めた。 読み始めるとアッという間にその世界に引き込まれていく。 今も、寝る前に「源氏物語」の訳し本を読む、 という貴重な時間なのだ。 「頭中将かぁ。なんかことごとく光源氏に負けてるけど、 実際はこの人、出来る男だったんはないかなぁ」 理乃はふと、 今まであまり意識しなかった登場人物に意識が向いた。 「だけどこの男の『雨夜の品定め』は頂けない。 コイツが光源氏の女遊びの激しさに火をつけた訳だし」 と批判するのも忘れなかった。 どうも、出来すぎる人物にはどうしても粗を探したいらしい。 …本人は気づいていないようだが。 隣の部屋の舞は、 妹がどんどん源氏物語にのめり込んでいく姿を見て、 微笑ましくもあり心配もしていた。 あまりのめり込みすぎは良くない。 妹のやる気をそがぬよう、 少し様子を見よう、そう思った。 夢中になってページをめくる理乃の脳裏に、ふと …お香… そんな言葉が浮びあがる。 「お香、そう言えば源氏物語の中でもお香は さり気ないけれども重要な小道具のような…」 と感じた。興味がなかったので流していたが、 考えてみたら、お香は貴族の必需品なのだ。 この時代、入浴はほとんどしなかった上に、 トイレのつくりもお粗末なもので、 それらの匂いを消す為にも、お香は必須アイテム。 しかも、庶民には手が出せないほど高額なものだったらしく…。 そのあたりの衛生事情を鑑みると、 「源氏物語」の世界が 一気にコメディータッチになってくるから不思議だ。 けれども、衣服からそこはかとなく薫るふくいくたる香気。 何となく興味が湧いた。 頭の中で、お小遣いの残額を確認しつつ、 すぐにパソコンで「お香」を検索し始めた。 当時の再現は無理にしても、雰囲気だけでも味わってみよう。
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