第四話 そうだ!お香とやらを買ってみよう!

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翌日、部活帰りにコンビニでお香の支払いを済ます。 それから2日程でポストに届いた。お香は二箱。 ちょうど12色入りの色鉛筆くらいの大きさだ。 喜び勇んでお香を手に取り、 「ただいまー!」 と元気に家の玄関を開ける。 「お帰り」 母親の声が迎える。 「お母さん、お香届いたからチャッカマンとアルミホイル貸して!」 手を洗い、嗽をしながら理乃は母を急かす。 嬉しそうに笑いながら、言われた通りアルミホイルとチャッカマンを 娘に手渡す母親。素早くタオルで顔と手を拭き、受け取る娘。 「火事と火傷には十分気をつけるのよ!」 と念を押す母に、 「はーい!分かってるって!」 と笑顔で答え、二階の自室へと階段を駆け上っていった。 鞄をおき、早速アルミホイルを二枚に重ね、 細長いお香立て代わりを作る。 …まぁ、ただ折って長さ20cm、幅4cm程の細長い小皿 のように窪みを作るだけのものだが… そして木箱に丁寧に仕切られているお香を開ける。 まずは「平安の香り・六種の薫物(たきもの)」 というものから開けた。もう一種類も六種類あり、 そちらの方は鎌倉時代以前の香りの代表セットらしい。 お香はお線香のように細長い形状を選んだので扱い楽だ。 逸る気持ちを抑え、六種の薫物… 梅花(ばいか・春)、荷葉(かよう・夏)侍従・(じじゅう・秋) 菊花(きっか・冬)、落葉(らくよう・秋・冬)黒方(くろぼう・冬・祝い事) の内、まず梅花を手に取った。夏の香りと迷ったが、 梅の花に似た香り、とあったので親しみ易そうに感じたからだ。 まずは火をつける前に香りを利いてみる。 甘いような?でもやはりお線香のような?微妙な香りだ。 そして窓を全開にする。換気は大切だ。 チャッカマンで先端に火を灯す。 火が付いたら、そっとアルミ小皿に置く。 火は徐々に消え、調度お線香のように煙が出始めた。 煙は理乃の顔の方に向かって立ち込め、 「わ…思ったより甘い感じ。どこか懐かしいような…?」 なんだかどこかで嗅いだ事があるような気がした。 魂が記憶しているかのような、懐かしい感覚。 上品で奥ゆかしい香りとはこの事を言うのかもしれない。 そう感じさせる香りだった。 なんだか嬉しくなって、アルミホイルであと五つ小皿とお香立てを作る。 そして残りの5種類を一気に火をつけた。 五種類の煙が、理乃の全身を包み込む。
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