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第四十三話 占合③
親王が無作為に選んだ相談者たちを適当に振り分けている間、椎名は垂水に軽く頷いて見せる。それは椎名が垂水に指示がある時の合図だった。さりげなく彼の側に歩みよる垂水に、椎名は耳打ちする。
『我らの動きを予測して封じ込める術が施されていないかその痕跡を辿るよう数名に指示を出せ。その相手を特定出来るにしろ出来ないにしろ、その術の解除までやらせろ。その結果報告しろ』
『承知しました』
垂水は音もなく、風のように素早くその場を後にした。そして会場からは見えない場所に待機している三名の陰陽師に素早く指示を出す。彼らはすぐに命令をこなす為、示し合わせていたかのように四方に散らばりスッとその場より立ち去った。
(成る程、これが敦久殿の文にある通り、途中でこちらの術に気付かれ、解除の動きに出るでしょう、というやつだな。しかしここまで詳細に先読み出来るとはなぁ)
羽矢人は敦久の理乃への想いの深さに複雑な心境ではあったが、同時に彼の優れた陰陽の術に畏敬の念も抱き始めていた。
当の理乃はというと、これからの自分へのアドバイスをタロットで一枚引きしている。
(おっ! ウェイト版タロット78枚から『女帝』、しかも正位置。『あるがままに自然体で楽しみなさい』て事か)
ご機嫌の様子だ。
(ふふん、素直にこちらの予測通りに動いてくれるとはなぁ。残念ながら、私へは辿りつけぬよ)
滝に打たれながら祈りを捧げる敦久の口角が緩やかにあがっていく。そして不敵な笑みを浮べながら静かに目を開けた。
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