第四十三話 占合③

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「申し上げます!」  立っている垂水の前に跪く陰陽師。まだ歳若いようだ。 「どうだった?」  不機嫌極まりない垂水の表情。 「はい、四方八方調べましたが、術をかけた形跡は全く発見されませんでした」 「そうか、ご苦労だったな。持ち場に戻れ。他の者にも持ち場に戻るよう伝えよ」 「承知致しました」  歳若い陰陽師は垂水に頭を下げると、素早くその場を後にした。 「……となると、こちらの術が効かないとなると、相当手練れの者が術を掛けた、という事か」  垂水は大きく溜息をつくと、会場を目指して歩みを進めた。 「では、どういったご相談ですか?」  会場では、タロットカードの束を左手に、笑顔で向かい側に座る女房に問いかける理乃の姿があった。生き生きと目を輝かせている。 「えーと、その……」  そんな理乃に対して女房の方は気まずさと照れくささが入り混じったような表情で理乃を見つめる。覗き見しようと、十二単よりも身軽な小袿姿でるのが微笑ましい。まさかバレた上に親王に指名され、占って貰う事になるとは想像もつかなかった事であろう。目立たぬように檜皮色(ひわだいろ)の小袿に身を包んでいる。 「お悩みを話さなくても卜う事は出来ますよ」  と理乃はやんわりと誘導した。
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