第四十三話 占合③

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「お悩み、聞かなくても卜えるのですか?」  女房は期待を込めて目を輝かせた。 「はい。では、お悩みに必要な状況の言の葉をお伝えして、その後に助言を、という形にしましょうか?」 「はい! それでお願いします」 「では、少々お待ち下さいね」 「はい」  理乃はまずはマルセイユ版タロットの大アルカナ22枚を裏にしたまま切り始めた。そして上から7枚目を引いて表に返す。カードが示し他たのは『節制』。次にウェイト版タロット78枚を裏に返したまま、テーブルの上を大きく使ってシャッフルし始めた。  羽矢人は理乃を見守りながら、女房の不安と期待に満ちた眼差しでタロットカードを見つめているのを確認する。見慣れないカードの絵柄に興味津々の様子だ。 (こうして卜いをしているリノ様も、生き生きとしてらしてとても魅力的だ)  羽矢人はしみじみと思った。そして改めて、敦久が理乃に任せるようにと言った理由が分かった気がした。 ……マルセイユ版は『節制』、ウェイト版は『ソードの十、正位置』……  理乃は女房に笑顔を向けると、言葉を慎重に選びながら解釈を伝える。 「お待たせしました。お悩みの状況ですが、今とても傷ついてらっしゃり、お悩みの件の事をどう対処すれば良いのか分からず、モヤモヤを抱えてらっしゃる状態ではないですか?」  すると女房は大きく目を見開き、息を弾ませた。 「はい! まさにそうなんです。そんな状態で。どうして良いか分からなくて……」 「そうでしたか。カードは非常に傷ついている、と強く示しています。では、どうしたら良いのか助言のカードをを引いてみますね」 「はい! お願いします」 「畏まりました」  理乃は再びマルセイユ版タロットを手にした。 ……それにしても、タイムスリップ便利グッズって本当に重宝するなぁ。カードの事は「札」とか自動変換されてるんだろうな……  とその恩恵をつくづく感じながら。  
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