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スウッと霊たちが消えていく。皆一様に、彼に憐みの視線を突き刺しながら。
「…………」
「……だから誤解だっつの……」
深く深くため息をつき、彼は細目でミイラ夢亞をチラと流し見た。
「……おひとり暮らしではなかったのですね。あんなに多くの霊たちに取り憑かれていらして……」
「取り憑かれてるっつーか。……ちっ」
すると彼の細目がググッと見開かれていき、身体が霞み始めた。
「え……っ?」
透き通った身体が徐々に下へ下へと集約していき、やがて夢亞の足元に現れたのは一匹の黒猫。
「さっきの黒ネコさん……?」
「俺は仙狸。いわゆる猫又……長生きしすぎて妖力を持っちまった化け猫だよ」
最初に出会った時は一本だった尻尾が、フワッと二本に分かれる。
「長く生きてるうちに、恨みつらみを抱えて死んだあいつらを拾う羽目になってな。ああ見えても全部悪霊の類だ。気が晴れるまで成仏できない」
「せんりネコさん……」
呟いた夢亞に、黒猫がニャアと笑う。
「おかしいだろそれ。人間の姿の時は、千の里と書いて千里と名乗ってる」
「目を開いた時のあなたが意外にもイケメンだったので驚きました……」
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