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「……それにわたくしが欲しいのは、食べ物ではなく」
つっと爪先立ち、濡れた桜色の唇が彼の首筋に触れ……
「Vreau sange」
総頚動脈に夢亞が突き立てたのは、可愛らしい唇から剥きだした犬歯。
「──っ!?」
その刹那、彼女のこめかみに彼のグーパンが飛んでバゴン!
首が真横に90°強折れ曲がってボギン!!
「ウゴッ……?」
首が倒れ、肩に完全に頭を乗せたまま夢亞が茫然と立ちすくむ。
「ウゴ、じゃねぇ。いきなりナニしやがる」
「……血を頂こうかと」
男はちょっぴり齧られた首をさすりながら、夢亞を細目で睨みつけた。
「血ぃ? なんだお前、血吸いの魔性か。変わってんな」
「ええまあ……。わたくしの一族は元々ルーマニアが本拠地ですから、日本では珍しいやもしれません……」
「毛唐が日本で幅きかせてんじゃねぇ」
「ゴメンナサイです」
夢亞は両手でなんとか頭を持ち上げて真っ直ぐ固定したが、手を離すとまたコテンと頭が倒れてしまう。どうやら首の骨がポッキリ折れたようだ。
「あの……あなたも魔族ですの? わたくしこれでも握力400㎏くらいある怪力ちゃんですのよ。それをいとも容易く跳ね除けて」
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