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店内に鳥の鳴き声が響く。
レジスタッフからのヘルプの音だ。
「うおぃ、こっちも忙しいんだよ!」
あわただしくバックルームを飛び出し て行く。
「いてらー」と中村の声が聞こえた。
コミック売場を通り抜けレジカウンターに辿り着くとコバさんが慌てた様子で説明してきた。
「えっとですね。これとこれで包装して、この2冊は女の子用、でこっちはメッセージカード付けたいのでカード選んで貰ってから男の子用でお願いします」
「分かりました」と言ったもののかなり面倒だ。
コバさん自分でやれば良いのにと思いながら出来ないことは知っている。コバさんはどうしようもないほどに不器用かつ天然だから。
渡された商品を持ってレジ横の作業スペースに移動した。
お客様が「あっ」と声を出されて目でコチラを追ったがコバさんは気付いていない。メッセージカードを選んでもらう段取りをしているからだ。
もしやと思いレジを覗きこむ。
何も表示されていない。お客様は財布を抱えたまま。
「コバさんお会計は済んでますか?」
コバさんは何が?みたいな顔をして振り返った。
言葉が脳まで届いてないのかも、そう感じたのでもう一度繰り返した。
「ひぃ」と声を吸い上げて僕から商品を受け取った。
「申し訳ありませんお客様ー」
顔がみるみる赤くなっていく、お客様も半笑いで「払わなくて良いなら」なんてふざけてくる。
お会計が終了し僕は再度商品を受け取り包装を開始した。
コバさんは小声で「またやっちゃったよ」とその場にしゃがみこんだ。
カウンターは囲まれているのでコバさんの姿は見えない。が、どうやら頬を叩いて気合いを入れていたみたいで赤面とは別に赤みが増していた。
包装が終了し、お客様に商品を渡し終えるとコバさんが「ごめんよ」と「今度からは気を付ける」と申し訳なさそうに口にした。
「気にしないで下さい。あるあるですから。バックルーム戻りますね。また何かあれば呼んで下さい」
バックルームに戻る途中ため息をついた。
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