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うーうーと唸り出した影に、わたしはとっても今更なことを聞く。
「ねぇ、ごめんなさい、お名前教えて」
「……みゆき。深い雪の、深雪」
「み、ゆ、き、くん」
「なに今更、名前なんて聞いて。一年同じ部活だったのに。いやあんた幽霊部員もいいとこだったけど」
「部活?」
「天体観測同好会。もう三年生が引退して、俺が部長。ていうか二年生で天体観測したことないって」
「わたし、二年生?高校生?十七歳?」
「そうだよ。なに、記憶喪失にでもなった?」
「さあ……」
深雪くんは首を傾げる。
「お前、今日、変」
「どこが?」
「薄着。ラジオ。髪。裸足。笑い方」
ようやく引っ張り出せたラジオを掴み損ねて、わたしはラジオを砂の上に落とす。赤いラジオ。小さなラジオ。ざあざあ、ノイズ。何故わたしはこんなラジオを持ってきたのだろう。
ええと、忘れてしまった。
「いや、裸足とか、薄着とか、たまにあるけど。あっちゃいけないんだけど、たまにそんな格好で会うけど」
「……うふ」
「あとそれ。笑い方。ふだんもっと明るく笑うだろ、あんた」
「わたしと深雪くんってそんなに仲良かったかしら」
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