episode 1 ローズガーデン…薔薇の庭園に住む美しき主人

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「おいおい…この6年余りで随分な悪化だな」 「元々感情の起伏が多々あって宰相補佐官とは言え彼の手腕はお父様やお爺様の比ではなく余りに凡庸だったわ…ただ口が上手いのは確か、でもそれだけで一国を治める器量があるわけないでしょ?周りの目は誤魔化せても実の息子の目迄は誤魔化せるわけないじゃない…今回の啀み合いはそんな中から生まれた必然よ」 「その息子…ってのはどうなんだ?彼が君に近い理想を持つなら調略で何とかなるんじゃ?」 ロディの質問に対しレムは思わず口元を押さえて吹き出す様に笑った、少し不機嫌そうな顔を見せる。 この時レムの頭に過ったのはかつてサウス・ガーデンが父の統治下にあった際、ご機嫌取りの一環だろう…アレフは良く息子をレムに合わせていた、その度に女と勘違いしたイングリットが恋文を認(したた)めて来た事を思い出していた。 「彼は恐らく無類の女好きね…」 「そうなのか?」 「ええ…イングリットは昔から私を女の子が男装してると勝手に勘違いして会いに来る度恋文を認めて来ていたの、毎回否定して最後は追い返すのだけど…すごいわよ彼、当時でさえガーデン内の散策序でに女性を口説いていたくらいだからね…」 「何と言う破廉恥な…!なんだ、その軟派な行為は…阿呆なのか?」 「阿呆ではないわ…でもその性癖がある男だから、彼が宰相にでもなればサウス・ガーデンは売春斡旋国家になっちゃうわね…当然内政はバラバラ、経費は赤字…良い事はないでしょうね」 「要するに一国を束ねる器としては現宰相もその息子も欠陥品と言う訳か?」 「単刀直入に言えばそうなると思う…何れにしてもサウス・ガーデンは良い方向には行かない」 「そう言う事か…」 最後に2人は頷いて話は終わった、更にその後はお茶にスイーツ、果ては社交ダンスと少ない休暇を大切にする様に過ごし、ダンスの際はレムがまさかの女性側の踊りをマスターしてるとは思いも寄らず、内心ロディも驚いていた。 充実した1日を楽しみ、ロディが帰宅する時は既に太陽が沈み辺りは闇の支配する月夜が広がっていた。
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