episode 2 西国へ

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思い付きから生まれた孤児院設立プランは既に半分を終えていた、入れ替わり立ち替わり大工や装飾士はローズガーデンを訪れ次々と施設を図面通りに組み付けて行き建物の外観はほぼ完成…このペースなら夏の日差し照りつける前には無事竣工を迎えそうだ。 そう言えば子供達の到着に先立ってナナキ達が手を回していた売春に身を投じようとする二十歳未満の少女達はギリギリの所で難を逃れ数日前にレムの元に到着し謁見後、彼女達の教育係をマンツーマンで付けた、これは1人の指導員に複数名の見習いを任せると指導が行き届かず中途半端な侍女が増える事を懸念したレムの提案で、幸い侍女見習いの人数と既に使用人として仕える人材が丁度だった事も理由の1つ。 メイリンが提案した内容も彼女達に問うた所、兄妹が多く子供の世話に自信のある少女達数名が手を挙げて自己申告しその子達には孤児院の手伝いを任せる事にすると、こうして徐々に基盤が出来始めた頃、レムには更なる大仕事共和国訪問の日が近付きつつあった。 「レム!居るか?」 朝の身支度を整えている途中に支度部屋の扉が勢い良く解放され高いテンションで従兄弟のロディが入り込んできた…のだが 「きゃーーーっ!!」 ロディの耳をつんざく様な悲鳴が響き、何事かと声のする方向に視線を向けるとまだ上着を身に付けず髪も整わないレムの姿が飛び込んで来て更に次の瞬間にはクッション爆弾が複数個飛び交い1つがロディの顔面を捉えよろけさせ尻餅を突かせた。 「もう!バカ!恥知らず!!」 断続的に罵声が向けられ流石のロディも現状を把握して背を向けた、一瞬レムの真っ赤な顔が見えたのだが更なるクッション爆弾に慌てて再び背を向け…ハアハアと息を荒げたレムは最後のクレームをロディに突き付ける 「言ったはずですよ!ここでは女なのです、それに女装する姿なんて見られたら余計に恥ずかしいじゃありませんか!…ロディ、少しは素行に注意して下さい、これがもし本物の淑女だったらお父様に激昂されますよ?」 返す言葉もないとはこんな時に使うものか…と背を向けながら反省の色を見せる 「本当にすまん!余りの勅命に浮かれた…これは流石に失態だった、許せ!レム」
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