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樹海に迷い込まない様に真っ直ぐ伸びる道を抜けるとナダル平原に出る、ナダル平原は今を遡る事1000前の戦いを思い蘇らせる古戦場跡、まだ騎士団領も無く単なるゴート騎士と呼ばれ様々な国に派兵されていた時代からそれはそこに広がる、シュナイダー家が旧ゴート騎士総括のハインリッヒ総督からゴート騎士の全権を移譲されたのは500年前、シュナイダー家は彼方此方に派兵されていたゴート騎士をハインリッヒ家の領地イースタンに統合して正式に騎士団領を立ち上げた。
因みにイースタンは騎士団領首都ゴートに名前が変わる前の旧名称である。
「隊長…前方に人影があります」
不意に先頭を進む騎兵の1人が踵を返してロディの側へ来てそんな事を言う、一行を一旦止めて彼に追随して前に言ったロディは修道服に身を包み土下座の様な格好で地面に平伏す女性をそこに確認し馬を降りて近付いた。
見た目その女性は酷く疲れている様で心成しか少し痩せている様に思える、こんな樹海の一端でその様な姿を見るのはロディも初めての事だが、改めて彼女に話しかけて見る。
「女…この様な場所で何をしている…よもや死のうなどとは言うまいな?」
「………。」
「質問に答えてくれまいか…君は何の為にこの様な場所にいる?」
「………。」
ロディの質問に彼女は答える事なく黙り続けたまま土下座を止めようとしない、共に立つ男が少し強めの口調で問う
「女!用もないのに行業を妨げるのは如何なる理由か!王子自らの質問に答えぬとは女と言えどもただでは置かぬぞ?」
平伏す女性は心成しか震えている様にも思えるが回答がない事にロディは首を傾げ顎を指で摩った。
「お待ちなさい…ロディ」
そこへ彼らの言動を気にして馬を降りたレムがゆっくりと近付いて2人を制すと女性の正面に立ちしゃがみこんだその姿を隊員が見るなり止めようと踏み出したが、ロディは敢えてそれをせいして止めた。
「この様な女性の前で上から目線では怯えてしまうわ、ロディ…こんなに震えてるじゃないの!」
「す…すまん」
レムは彼女の肩に手を当てて起こし目線を合わせるとその細さに驚く、更に観察するとまるでそれは栄養の行き届いていない感じで弱々しい…レムはロディから水の入った木の水筒を要求しロディも迷わずそれを差し出した。
「さぁ…水をお飲み下さい、渇いていては言葉もでないでしょう?」
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