episode 3 シラン・ジアス共和国

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「トーラス、お前は残りのゴート騎士を先導してヨルド村に先行し現状を村長のジルに報告してくれ」 「畏まりました」 次に選んだのは彼女の集落を訪問する面々、ナナキとヌーラ騎士団からはロディとバッツ、ニコルが選抜された、更には食料品や水などを全物資の五分の一を抱えると馬では行けない道を徒歩で進む事を決め副隊長のトーラスや伝言役として同行するロキと一旦別れて行動した。 集落へ通じる道は確かに馬で通るに狭いが人が歩いて進むには十分な整備がなされている、これは歩きながら彼女に聞いたのだが、道を整備したのはかつて樹海の道路整備をしたレムの叔母にしてロディの母親アイリスが集めた整備士の中の1人がやったと言う話だ、2人はつくづくアイリス妃の社交性を羨んだ。 集落は小さな教会を中心に森の中にあった、名前はないが自然の恵みが豊富に見える、しかし、良く話を聞くと実りはあっても殆どが人の口に合わない物ばかりで食料の殆どは教会の外で耕した畑から手に入れているそうだ、しかし近年は人手が女ばかりになり若者はそれほど居ないとの事。 支援物資も激減し集落の住民の生活は疲弊していて彼女は騎士団一行があの道を通ると言うおふれを聞いて2日前から待っていたらしい、それを聞いた2人は胸が締め付けられる思いに駆られた。 整備された山道を凡そ30分入ると集落の住居らしき建物と彼女の言う小さな教会が視界に入る 「アレですか?」 「はい…建物も老築化が進み建て替えるにも男手が少ない為苦慮しています」 確かに見ればあちこちの壁は崩れ屋根は痛み人が住むには少し廃墟に近い様子が伺える、集落に入るとそこに住まう人々は物珍しい顔でレム達を窺い子供達は格好良く見える騎士達に喜びを顕にした。 「リース先生お帰りなさい!」 「みんな元気にしていましたか?」 『はい!』 その光景はまるで母親が子供に向ける慈愛に溢れたもので子供達は一様に喜びを溢れさせて彼女に身体を寄せる、ロディとレムはそんな光景に少しホッと溜息を零した、しかし、問題なのは子供達の面倒を見る大人達の様子、リースもそうだが他の女性達も普通より痩せて見える、子供達が十分な栄養を取れていても大人達はその文身を削る様な感じに映り、レムもロディも手放しで喜べる物ではなかった。
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