episode 1 ローズガーデン…薔薇の庭園に住む美しき主人

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「ちょっと待て…性別を偽ると申したが、其方女にでもなるのか?」 「はい!完全なる安全を確保する為自分は女として性別を偽り生活しその裏で情報を収集しようと考えてます、今回の件…些かアレフ宰相補佐官側に焦りを感じますので今は勝ちに驕りを抱いているでしょうけど恐らくそれは今だけだと思います、そもそも商人気質でもない彼が完璧にコントロールするのは事実上不可能でしょう、あるとすれば武力を盾に住民を管理し何か起きれば断罪する…この様な構図でなければ難しいと思います」 ロイが次々と彼の口から飛び出す言葉に驚いている中、アースレイの妹で彼の叔母のアイリスは何事も感じない様な顔で時折笑顔まで零す始末、ロイにそれを問われると当然の様に 「ルリアンは持って生まれた天才肌…サウス・ガーデンを建国した私のお爺様に良く似ています」 と、言ってのけた。 ルリアンから見ればサウス・ガーデンを建国したのは曽祖父であるジル・ローグ、そんな人と良く似てると言われれば話で聞いた曽祖父の事を思い浮かべずには居られないのだが、彼は自分の生まれる50年も前に他界してるので詳しくは知らない。 ただ、逸話として残るのは彼が商売で財をなし建国に踏み切ったと言う事実だけだ、あと知る事と言えば幼い頃に良く可愛がってくれた祖父が国を拡張し、父はその責務を引き継いで新たな商売を考えてる最中に今回の事件が勃発したと言う事。 そして今は失われている物を取り戻すと言うプロジェクトをルリアンは握らされていた。 「成る程…深い思慮がある訳だな、ならば当面は領地の北にあるノース・ヴィレッジで住まうが良い、彼処には薔薇の庭園…ローズガーデンの邸宅がある…数年前に最後の主人が邸宅を騎士団領の保養地として利用してくれないかと申告があり、あの見事な薔薇の庭園を失うには惜しいと考え妻と話し合った結果譲り受けたのだが、この情勢下だ何時サウス・ガーデン側が暴発しないとも限らないので今は無人と言うより使用人に命じて管理を頼んでいる…差して広くはないが彼処なら大丈夫だろう、ルリアンあの邸宅を女主人として自由に使うが良い」 叔母に詳細を聞いた所、一年中その庭園には薔薇が咲くと言う、初夏を匂わせる真紅の薔薇、冬時期には白薔薇が花開き他に様々な色を持つ薔薇が庭を彩る、ルリアンは頭がキレる反面花を愛でるのが好きと言う一見男子らしからぬ一面もある。
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