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彼が最も好む花も薔薇であの美しい花弁が開く影で棘を持つ辺りが自分の心根を示している様に感じるのか宰相府の自室にも薔薇を切り花にして花瓶に挿して愛でていた。
「貴方…薔薇はお好きでしょう?ローズガーデンの邸宅ならそれも可能です住んでみませんか?」
「はい…叔母上様、喜んでそうさせて頂きたいと思います」
叔母のアイリスに促されルリアンは快く快諾したのである。
「さて、もう1つの課題だが…性別を偽るにしても相応しい名前が必要だ…それはどうする?」
「サウス・ガーデンには幼少の頃から良く遊んでいたレム・フランと言う少女が居ました、しかし彼女は身体が弱く事件の起きる1年前7歳でこの世を去りました、僕は彼女の分も生きようとレム・フランの名前を頂きローズガーデンに住まうのならば大好きな薔薇の読みであるローズを付けてレム・フラン・ローズと名乗りたいと思います、もし彼女が元気ならば宰相府に迎え入れようと思って居ましたから…これは彼女に対する僕の意志です」
「成る程…良かろう、だが楽ではないぞルリアン。女として生きるという事は女としての基礎を身につける必要があるそれは覚悟の上か?」
「勿論です、成り切ってみせますよ叔父上…それに僕はこれまで姫と言われた事が何度もあります、多分顔立ちや容姿がその様に見えたのでしょう…宰相補佐官の息子など僕を見る度女の子と間違えて居ましたから後は女の子らしさを身に付ければどうにかやっていけますのでご心配には及びません」
「良い覚悟だ…ならば先に邸宅へ詰めている使用人総括のメイリンにルリアンの女性化計画を打診しておこう後はお前次第だ」
「ありがとうございます」
こうしてルリアン・ローグことルリアンはローズガーデンの邸宅に身を移し使用人総括のメイリンや侍女達と共に女性の生き方や仕草、果てはトイレの使い方さえも完璧に学んだ、こうしてサウス・ガーデンから逃亡し騎士団領内で生活するルリアンはその名前をレム・フラン・ローズと改めて生活を始める。
気付けば6年の歳月を擁して女性と見まごうばかりの生活を手に入れていた。
☆
「レム様…」
「どうかしましたか、メイリン?」
「お付きのルカイン様が参りました、事が動き始めたのかも知れません」
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