第8章 彩度

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第8章 彩度

「今日は図書館行かないの? 」 「うん。どこか遊びに行く?」 「ホントに!? 嘘みたい、これは夢……? 」 「そんなに言うならやめるよ? 」 「わっ、待って! 」 樋野さんが去った後の図書館は以前よりも味気なく感じられた。 毎日通っていたのも、今では週二回程度に落ち着いている。 樋野さんと代わった新しい司書さんも優しく愛想のいい人で、不満がある訳ではないけれど、やはりどこか物足りなく感じてしまう。 本が好きというだけで図書館に通っていると思っていたけれど、実は樋野さんの人柄や選ぶ本、それについて語り合うことの方が好きになっていたのかもしれない。 手紙を書こう。今読んでいる本について。 これから読んでみたいものについて。 そしてまた彼のお薦めの本を教えてもらうのだ。 読んだ後はまた一緒に物語を共有し、語り合うのだ。
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