月の舟は、星の林に漕ぎ出ずる

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高校生の頃はただ無駄に時を過ごしていた。 大学か専門学校を出て自立する、それだけを目標としていた。 その頃、自分はよく個性的だと言われた。ひっくり返せば『変わってる』ということだ。 恋愛小説や漫画にあこがれるのが普通で、現実味のないものに夢中になるのは普通じゃないらしい。地学部の天文班に所属していたが、変わった人の集まりだと陰で言われているのを知っている。星が好きだといえば、なんでそんなものに興味を持つの?と言われた。好きなら好きでいいじゃないか。 嫌なことはすべて天体ドームのある屋上で、星を見て忘れた。 星が出るくらいに少し遅くまで学校に居ても、地学部だと特に何も言われない。 とにかく、今の自分の願いは進路だ。どう転ぶにしろできれば地元に居たくない。 自分を幼い頃から知っている人と距離を取りたかった。親もそうだ。煩わしいとさえ思った。私はこういうものだという、固定観念で話をする人たちとの会話にうんざりしていた。 煌々と光る月には、地元から出て、自分を知らない人たちがいる場所で生活したいと願っていた。
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