月の舟は、星の林に漕ぎ出ずる

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高校を卒業して一浪した。 予備校へ通っていた時も、講義を受け終えたくたくたの頭で、夕方の空に浮かぶ月や星を眺めて願った。 その願いが通じたのかどうかわからないが、翌年他県にある短期大学に合格して、一人暮らしが始まった。 今まで実家で暮らしていて、帰宅すればご飯も、洗濯も済んでいるし、掃除もしなくてよかった。 一人暮らしの自由になった分、自己責任が増えた。 就職しても、仕事を覚えるのに必死で、会社とアパートの往復だけの生活。毎日疲れ果てて寝てしまうのが常だった。 洗濯物を取り込もうとアパートのベランダに出てみると月が出ていた。 この頃夜空を眺めていない。 月は出ていたが三日月だった。満月はいつだったんだろう。 今だったら願ってもいいのかな。一人で頑張るには少し疲れた。 月を見ていて、思わずため息がこぼれた。 (自分に合う誰かと巡り合うことはできるでしょうか?私には過ぎた願いでしょうか?)
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