花火の終わりに。

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いつもならここで笑い声を挟めるのだけど。口元が無様に痙攣するだけで終わった。 「学校なんて水槽みたいにちいさくて、お祭りみたいにすぐ終わっちゃって、恋愛なんておままごとみたいなのに、みんなして自分だけは、自分たちだけは違うって信じてるんだ」 それは自分を含めて。 「……永遠なんてくそくらえ」 『永遠なんてくそくらえ』 あははっ、とスマートフォンの向こうから笑い声が聞こえた。 『最高。永遠なんてくそくらえ』 「恋なんてしても、永遠なんて信じてやるかってね。みんな馬鹿だ」 けたたましいベルの音とともに、電車がホームに滑り込んでくる。下駄をたかたか言わせながら、電車に乗る。乗客は眠っているOLと学生が一人ずつ。電話は切るべきだろう。マナー違反は、悪いことなんだから。 『もしかして、電車に乗った?』 「うん。もう切るね。本当に今日はありがとう」 『こちらこそ。ありがとう』 ぶつり、音声が途切れる。どっと疲れが溢れた。空いている席を見て、少し悩む。座りたかったけど、そのまま寝てしまいそうだったから、やめる。座席の支柱に掴まる。 元彼たちはまだ向かいのホームにいた。笑いあっている。ぷるるる、と発車のベルが鳴り響く。ちら、と女の子がこちらを見た。視線があった。あ、と不格好に口が開くのが面白くて吹き出しそうになった。 元カレがこちらを見ると同時、電車が走り出す。わたしはせいぜい、悪趣味に笑うことにする。
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