夢一朝

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 森の奥から今度はちゃんと私たちの方へ向かって猪が走ってきた 『私』には、その猪が何かに追われているようにも、引っ張られているようにも、はたまた自分のしたいように堂々と駆けているようにも思えた  猪は男の横を過ぎて  私の横を過ぎて  泥の中からがばっと開いた丁度猪を飲めるくらいの口の中へ飛び込んでいった  口はすぐに閉じた  口の開いていた所から細長い影が伸びていた、曇り空だがはっきりと影が見えた  男は微笑んでいた、私も微笑んでいたと思う 『私』だけが怖くなって目が覚めた  悪夢だった  私』は布団からのそのそと出て、白い寝巻替わりのジャージから着替えることなくドアを開けて部屋の外へ出た  母の作る朝食の香りが漂って来る、今日はパンではなくご飯だった  何と無く朝のニュースを眺めながら手を合わせて「ごちそうさま」と言った  未だ忘れない夢に、忘れたくない夢が、意味不明な夢らしい夢と、最早何が怖かったのかも分からない夢を  まだ覚えていた         『私』は筆を執った      。
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