第四話

10/10
14人が本棚に入れています
本棚に追加
/94ページ
 直は、何を言うべきか分からなかった。だが、ふとあることに思い至り、慌ててハルヒコに声をかける。 「でもさ。本当にそんな、やり直しなんかができたらさ。俺と花木がくっつかなかったら、あんた生まれないってことにならないか?」  「そうですね」と。事も無げにハルヒコが頷く。恐らく、そのことには直なんかよりもずっと先に考えていたのだろう。そして、何度も何度も考え抜いているのだろう。  そのためか、ハルヒコの次の言葉は、それまでに比べやけに静かなものだった。 「だから、父さんはそれを後悔しているんだと思います。僕が生まれ、母さんが死んだことを。僕が生まれたことを、なかったことにしたいくらい」
/94ページ

最初のコメントを投稿しよう!