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直は、何を言うべきか分からなかった。だが、ふとあることに思い至り、慌ててハルヒコに声をかける。
「でもさ。本当にそんな、やり直しなんかができたらさ。俺と花木がくっつかなかったら、あんた生まれないってことにならないか?」
「そうですね」と。事も無げにハルヒコが頷く。恐らく、そのことには直なんかよりもずっと先に考えていたのだろう。そして、何度も何度も考え抜いているのだろう。
そのためか、ハルヒコの次の言葉は、それまでに比べやけに静かなものだった。
「だから、父さんはそれを後悔しているんだと思います。僕が生まれ、母さんが死んだことを。僕が生まれたことを、なかったことにしたいくらい」
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