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左頬に強い衝撃。
強い痛みと大きな音がなった。
平手打ち。
涙を唐突に流しながら彼女は僕を叩いたのだ。
「バカッ」
「僕はバカじゃない」
「バカ。大バカ。本当に大バカなんだか・・・ら・・・」
彼女は僕のベッドで泣きじゃくっていた。
ここまで泣いてくれるなんて思わなかった。
あの時ので最後かと思っていたからまたこうして彼女の涙を見るなんて思わなかった。
「失礼、お邪魔するよ」
ここで空気を読まない医者登場。
いや空気読むなんてことしたら医者じゃないけどね。
「検査結果は出た。多分自分でももう結果はわかるだろ? 簡潔に言おう、君は下半身を動かせない体になった」
「やっぱりですか」
「・・・先生、下半身動かせないとはどういう事なんですか?」
僕は理解していた。
だけど彼女は理解出来ていなかった。
いやしたくなかったんだ。
だけど医者にはっきりと伝えられた。
完全に背中の骨が折れて下半身に麻痺が発生している。
リハビリをしていつか直せるかどうかみたいな話らしい。
「そんな・・・」
彼女は泣き崩れた。
僕はそれは耐えきれなかった。
抱きしめたかった。
一度振った僕がこう思うのは不純だろうか。
泣いてる女の子がいたら慰めてあげたい。
そう思わないだろうか。
僕は思う。
強く思う。
この動かない足が恨めしい。
「医者としての僕の話はここまでだ。後で親御さんが来るよ。連絡したからね」
「分かりました・・・ところで一度彼女と二人きりにさせてもらえないでしょうか」
「個室だから構わないよ。で用事は早く済ませるといい」
医者は出ていく。
時間をくれた。
彼女と話す時間をくれた。
いう機会はここしかない。
「僕はこうなっちゃったけど言いたいことがあるんだ。涙を拭いて聞いてくれる?」
「なによ」
僕はここで言うしかない。
戻してしまった時は戻らない。
だから今僕は僕の心のままに言葉を告げる。
「彩、君が好きだ」
彼女は顔を真っ赤にして涙が消えた。
そして悲しみの顔が消えた。
そう君に悲しい顔は似合わない。
いつも君の笑顔に癒されてきたんだから。
「今度は僕からの告白だ。どうか受け取ってほしい」
精一杯の言葉。
彼女には届いたのだろう。
今度は悲しみの涙ではない。
暖かな涙が溢れていた。
「はい、よろこんで」
彼女は笑顔でそう言った。
そう。これは僕と彼女が幸せになるための物語だ。
end
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