0人が本棚に入れています
本棚に追加
/3ページ
☆
福岡で仕事に就いて10年が経つ。
我が家におばあちゃんが泊まりに来た。
ウチの近所は藤棚が有名でSNSトップランキングイン。
おばあちゃんの目的はそれだ。
僕の自宅から車で20分。
こんなに近いのに一度も行ったことがなかった。
藤の花を拝むと長生きするんだって言うから、
僕はおばあちゃんとデートに行くことにした。
藤棚スポットに着いても、駐車場から15分は山道だ。
アスファルト舗装の階段から
木枠で出来た山道の階段に変わり
藤の香りがしてくる頃には足元が泥道に変わった。
おばあちゃんを手摺側に寄せて
僕はその斜め後ろから香りが強い方に頬を向けた。
アーチ型の藤棚の下に沢山の人が藤の天井を見上げている。
蜂や蝶がいるけれど感嘆の中に紛れて
自然に溶け込む。
迎える花々を辿り巨木を見つけた。
藤はドスンと根を張りお相撲さんが四股を踏んでるみたいだ。
藤の枝葉は一本が2メートルもなり
樹齢600年を優に超えてしまう。
二車線分はある幅のトンネルに
何十メートルも続く道のりの藤棚トンネルはまだまだ続き
言うまでもなく全部藤の花。
人口装飾ではなく、藤が自ら絡んで結んで然るべきデザインを創る。
白
薄紅
薄紫
藤色
見上げる天は全て
藤の空。
最初のコメントを投稿しよう!