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福岡で仕事に就いて10年が経つ。 我が家におばあちゃんが泊まりに来た。 ウチの近所は藤棚が有名でSNSトップランキングイン。 おばあちゃんの目的はそれだ。 僕の自宅から車で20分。 こんなに近いのに一度も行ったことがなかった。 藤の花を拝むと長生きするんだって言うから、 僕はおばあちゃんとデートに行くことにした。 藤棚スポットに着いても、駐車場から15分は山道だ。 アスファルト舗装の階段から 木枠で出来た山道の階段に変わり 藤の香りがしてくる頃には足元が泥道に変わった。 おばあちゃんを手摺側に寄せて 僕はその斜め後ろから香りが強い方に頬を向けた。 アーチ型の藤棚の下に沢山の人が藤の天井を見上げている。 蜂や蝶がいるけれど感嘆の中に紛れて 自然に溶け込む。 迎える花々を辿り巨木を見つけた。 藤はドスンと根を張りお相撲さんが四股を踏んでるみたいだ。 藤の枝葉は一本が2メートルもなり 樹齢600年を優に超えてしまう。 二車線分はある幅のトンネルに 何十メートルも続く道のりの藤棚トンネルはまだまだ続き 言うまでもなく全部藤の花。 人口装飾ではなく、藤が自ら絡んで結んで然るべきデザインを創る。 白 薄紅 薄紫 藤色 見上げる天は全て 藤の空。
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