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今更何を言ってるんだこいつは
「はぁ?」
「いやね、うちの社長が銀座で遊んでたってすっぱ抜かれてさ」
「平気ですよぉ。社員一人一人見張ってるわけじゃないでしょ?」
半分嘲りともいえる笑みを浮かべる。
店に着いてからもずっとそのことが頭にあるようでぼんやりとしていた。
「カナちゃん?」
背後からママが声を掛ける。
「すみません、代わりの客、連れてきたんで」
それだけ告げ、逃げるように更衣室に向かう。
あの一件以来ママと二人きりになりたくなかったのだ。
無理やりキスされた訳ではなかったのだから。
むしろ先に求めたのは私の方だった。
父親と同じ歳の男としたキスが人生の初キス。
鏡に映る自分を見つめ返す。
ドレスを着るとやや老けて見える気がする。
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