名脇役

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名脇役

開扉と同時に僕がいる空間の灯りがついた。一人の女性が慣れた手つきで僕の体を掴み、その空間から持ち出した。髪を後ろで束ねた綺麗な顔立ちの女性は、色とりどりに盛り付けられた弁当の前に立ち、僕のチャームポイントである赤い蓋を開けた。そして、白く潤いのある手で瑞々しいブロッコリーの隣にあるアルミカップに向けて僕を搾り出した。どうやら今日の僕の一つ目の仕事はブロッコリーの味付けのようだ。女性は「できた」と呟き、僕の蓋を閉めた。そしてそのまま冷えた箱に僕をしまった。 寒く狭い空間ではあるが、僕はこの場所が気に入っている。僕にとったらこのくらいの温度が丁度良く、しっかりと整理されているので居心地は良かった。賞味期限が切れたものなど全く無く、他の食品の匂いも最低限に抑えられている。扉の裏側の棚が僕の居場所で、沢山の調味料と共に綺麗に並べられている。     
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