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汗をぬぐうフィリップに、もう一人の男がやってきた。
「フィリップ殿下はこれだからだめなんですよ」
これを言うのは黒髪に紺の瞳の流麗な身長の高い男だった。
「オーガン」
この男はジョージ付き執事であった。この主従は二人そろって感じが悪かった。
「お手を……」
「あ、ありがとう。でも、ごめんなさい」
「顔を上げて」
「ごめんなさい」
それから差し伸ばされた手をとり、フィリップは立ち上がった。弟王子は蔑みきった目を見せて言った。
「一族の面汚しですね。貴方など、修道院にこもり神に願っていればよいものを」
「ご、ごめんなさい、ジョージ」
すっかり頭も冷えて、冷たい弟を見あげた。冷えきった兄弟仲だった。
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