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「老師・・・・出家したとはいえ、わたくしは宗家の男子。我が生家の最期を見届けねばなりませぬ。そのために、行きたいと存じます。」
澄慧は住持を見つめた。そして四歳の頃からこの寺で教えを受けた謝意を込め、師への拝礼をした。
思えば、この宣徳寺に喝食として入れられた四歳の時から、兄のように父のように、筆の持ち方、座禅の組み方から教え、得度へ導いてくれたのが、今は住持の導覚和尚であった。その後、京の本山へ上ったのも、導覚和尚が己の修行に伴ってくれたようなものだ。
和尚は澄慧が足利学校へ移った次の年に、宣徳寺の住持となるため医王院へ帰り、澄慧が昨年帰国すると再び寺に受け入れてくれた。澄慧にとっては第一の師僧であり、その学恩を仇で返してはなるまいと、固く心に誓っている。
澄慧が門前へ出ると、甲冑姿の男が近づき、片膝を付いた。
「澄慧様であられまするか。それがしは、佐山医王院家臣、小島四郎惟時と申す者にございます。殿の命により、御身を城までお守りいたす。」
小島は名乗ると、配下に合図をした。輿が澄慧の前に据えられ、その場の皆が膝を付いた。
「馬には乗れますが・・・・」
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