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なのに、ある友人が最近その輪からとうとう離脱してしまったのだ。
お陰で毎日のように浮かれた話が斗貴央の前で繰り広げられる。
やるなら自分抜きで頼みたいと、頭を重くしながら斗貴央は男子トイレのドアを押した。すると、閉じた個室の中から小さな話し声が聞こえてくる。
斗貴央は思わず耳を澄ました。
「……ムリだよ、そんな……、だって……」
声はどうやら一人だけだ。中で誰かが電話でもしているようだ。
「待って! わかった、わかったから、行く、行くから!」
慌てたその声に思わず驚くと共に勢いよくドアが開いた。そして、斗貴央は目を疑った。
中から出てきたのはセミロングの髪をした制服姿の女子だったからだ。
「わあああ!!! ごめんなさい!! ここっ女子トイレ?! あれっ?!」
自分が入り間違えたのかと斗貴央は一瞬にして青ざめ、体を反転させる。思った以上に馬鹿デカイ声が出た。
「いいえ、合ってます! ごめんなさい!!」
大声で脅かしてしまったのか、彼女は足元に携帯電話を落としていた。斗貴央は振り返った時、それに気付き「大丈夫?」と声を掛けながら携帯に手を伸ばす。だが、ふと視線があるところで止まる。
──生足の、太もも。
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