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懐疑
「だあああああっ!!! ひでぇ!!!!」
学生たちで賑わう放課後のファーストフード店内に斗貴央の悲鳴が混ざる。
赤ペンでバツばかりが並ぶお手製のミニテストを紗葉良は斗貴央の目の前にわざと叩きつけるように返却した。辛うじて二箇所だけマルが見える。
「それはこっちのセリフです! 教えた俺が下手っぴみたいじゃんか、ホラ! 今日もやるよ!」
「な、なにを? ナニをやるの??」
くだらない言葉の響きにひとり盛り上がっている馬鹿がヘラヘラと紗葉良の横で笑っている。
「中学生か!! ちゃんと勉強しないならシャーペンの芯ありったけ飲ませるよ!!」
スパルタ家庭教師の頭に殺気立った鬼のツノを見た気がして慄いた斗貴央は慌てて教科書を広げた。懲りずにコッソリと手を握ったら甲をすごい勢いではたき落とされた。「ぎゃっ!」と大袈裟けに斗貴央は泣いた。
しょげている不出来な生徒を横目で一瞥し、テーブルに片肘を付きながら紗葉良はふと窓の外を見た。人混みの中に夏奈の姿を見つけ、目を見開きながら身体を真っ直ぐに起こす。
目を凝らして見えた隣に並ぶ男は──龍弥ではない全くの別人だ。どこかで見たことのある顔だった。
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