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──確か三年生の……。
「あれってあいつの彼女じゃなかった?」
紗葉良の訝しげな気配と視線に気付いたのか、斗貴央がすぐ横に顔を並べて告げる。
男の名前を思い出そうと神経を回していた紗葉良は斗貴央の気配に気付かなくて一瞬肩を揺らした。斗貴央は見たこともない男が夏奈の腰に手を回しているに気付き、怪訝な顔で紗葉良を見る。
「あいつらって別れたの?」
「──わかんない。夏奈ちゃんとは全然、口、聞いてないから……」
「じゃあ、あいつとは?」
紗葉良の言い回しに引っかかった斗貴央は、間髪なしで鋭く反応した。その声の強さに、紗葉良はやましくもない筈なのに一瞬返事が遅れる。
「あ、昨日、たまたま廊下で会ったよ。一言二言しか、話してない……けど」
紗葉良は笑って話しているつもりの頬が、なぜか引きつる気がした。
「何か言われた?」
「……ピアス、いいなって」
「俺とお揃いだけどな!」
わかりやすいヤキモチで斗貴央が更に声を張る。
「うん、そう。お揃いの。当たり前じゃん、俺が斗貴央とお揃いにしたかったんだもん」
斗貴央の拗ねた顔が可愛らしくて紗葉良は自然と笑みが零れた。その膨れた頬を細い指で撫でると口が開き「チューしたい」とねだる。
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