懐疑

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 もう、台無し、この男。と紗葉良はがっくり頭を落とすが誰にも見えないようにテーブルの下の手を握って「お家についてからね?」と甘く、優しく囁いた。  向かい合った空のソファシートには学生鞄だけが置かれ。持ち主と同じく肩を寄せ合い並んでいる。そこには二人が水族館で買ったお揃いのペンギンのキーホルダーが、周囲に見せつけるためのように仲良く並んでいた。 「あ゛っ!」  思っていただけのはずが、完全に音になって斗貴央の口から思わず出た。  声に気付いた龍弥が無表情のまま振り返り、温度のない目で視線を合わせた。 「よ、よぉ」と、喧嘩に巻き込んだ引け目もあってか斗貴央は思わず愛想笑いが出た。 「──でけぇ図体でヘラヘラすんなよ」  龍弥の返事は最高に愛想がなかった。単純な斗貴央はすぐに苛立ちが顔に出た。 「悪かったな!」  龍弥はクスリと鼻で笑う。なんだ、余裕かよ、クソ。と斗貴央は心の中で暴言を吐く。 「お、お前さ! 彼女どうした?」 「……どうって? どうもしないけど?」  ハイハイそーですか、つまんないこと聞いちゃいましたね!と、そんな斗貴央の思考は本人が思っている以上に顔に出ている。 「愛想が尽きたのかもな、ここ暫く会ってない」 「えっ?!」  吐き捨てるように笑って呟いた龍弥に驚き、斗貴央は黙る。     
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