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処置室に戻ると患者は、画像検査に行っていた。
移乗も救急隊の方が手伝ってくれている。
いつものことながら、ありがたい。
カルテの先生の記録に目を通すと引っかかるところがある。
「路上で人が倒れていると通報あり。救急隊、現着時通報者不在。」
やっぱりなんか妙。
馴染みの救急隊員に
「お疲れ様です。通報者は不在だったんですか?」
と声をかける。
「そうです。ちょっと変ですよね。事件とかじゃないと良いんですけど…手にも顔にも目立った外傷はありませんでしたし、痛がると言うか顔をしかめるのは、左胸を触ったときくらいです。家族への連絡もつかずで…」
同じ事を考えているあたり、経験値かなって少し誇らしくなると同時に欲しい情報をくれる救急隊員に感謝しているとCT室のドアが開いた。
「画像、パッと見で肋骨折れてますけど、それ以外は特に問題なしです。とりあえず、処置③でモニター観察お願いします。あと念のため12誘導取っておいてください。」
と指示が飛んできた。
12誘導というのは、12誘導心電図のことで、簡単に言うと心臓の動きに問題がないかを確認する検査。
心臓の動きが乱れることで意識を失うこともあるから当然だけど、その場合一過性のことが多い。
今回は現着から1時間以上は経っていること、目立った異常所見が左胸部を触ると反応があることしかないこと、そして、ここが救急外来だから『念のため』と言ったのだろうと経験から思ってみたりする。
そうこうしていたら、受け入れからコールがあった。
患者の兄が来たらしい。
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