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「加害者の方ですか?」
そう言った途端、その男性の顔が真っ青になった…
そして、その質問に答えることを躊躇っている様子だった。
その様子に妙な予感は当たるモノだと思った。
でも、その予感は『妙』であって、『嫌』ではなかった。
現に目の前に居る、この自称患者の兄からは、心底患者のことを心配しているのが伝わってくる。
ただの加害者ならこんな心配はしないだろうし、患者本人の意識が戻れば確認できる事だと思った。
だから、私は患者の個人情報の確認に質問を変えた。
それにはすらすらと答えられる。
その態度は誠実だった。
やっぱり『嫌』な感じはしない。
お互いに明言を避け、探り合うこのやり取りをこれ以上続けるわけにもいかない。
だから、私は最低限の情報を伝えた。
「今のところ命に別状があるような状態ではありませんが、まだ意識が戻りません。検査の結果も出揃ってないのでお待ちください。」
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